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2000-04-07

2011年 4月 7日(木) 天聲人語

 筒井康隆さんの短編に「ヒノマル酒場」なる傑作がある。大阪のと

ある大衆酒場。長っ尻の常連に悩む女将(おかみ)は、客を笑わせて

帰す一計を案じる。その頃、世間は通天閣前に降りたUFOで騒然と

していた

2000-04-06

2011年 4月 6日(水)付 天聲人語

 コンビニもカップ麺もない時代、夜更けの食欲は夜鳴きそばの屋台

が満たした。チャルメラの哀調に、寝たはずの腹の虫が共鳴したもの

だ。耳の条件反射とでもいうのか、終業のチャイムは解放感を醸し、

緊急車両のサイレンは胸騒ぎを催す

2000-04-04

2011年4月4日(金)天聲人語

 東北を代表する川といえば日本海に注ぐ最上川と、岩手県を南流し

て宮城県石巻市で太平洋に出る北上川だろう。その北上川は全長24

9キロにおよぶ。こんな一首がある。〈川幅の太さのままに海となる

北上川の長き圧力〉高橋みずほ

2000-04-03

2011年4月3日(金)天聲人語

 日常というものがかくも微塵(みじん)に破壊された光景を見たこ

とはないと、遅ればせながら被災地に入って思った。材木、瓦、ミシ

ン、仏壇、めがね、電動歯ブラシ、家計簿、かつら、割れた便器。あ

りとあらゆるものがねじれ、ゆがみ、ひん曲がって、街が集落が消え

ていた

2000-04-02

2011年4月2日(金)天聲人語

 福島の事故で、中部電力の浜岡原発に不安の目が向けられている。

同じ太平洋岸の沸騰水型である。浜岡の名で思い出すのは、遠い夏の

草いきれと鶏舎のにお い、大学の卒業研究で通い詰めた日々だ 

春に米スリーマイル島の事故が起きた1979(昭和54)年のこ

と。東海地震のリスクが言われる中で、浜岡の営業 運転は4年目に

入っていた。わが故郷静岡の原発は大丈夫かというのが、卒研の動機

である

2000-04-01

2011年4月1日(金)天聲人語

上野動物園がきょう再開し、震災前に中国からやって来たパンダ

が公開される。途切れた日常が、遠慮がちに戻り始めた。月が替わ

り年度が改まるこの機に、せめて気持ちだけでも切り替えたい

2000-03-31

2011年3月31日(木)付 天聲人語

〈生きていて生きてるだけで燕(つばめ)来る〉飯田操。本紙が大

震災の句を募ると、千数百作が寄せられた。なおも目前で進行中の

惨絶を、声や字にすることで 我を取り戻す。3・11を語り継ぐ3

月の言葉から
  

2000-03-30

2011年3月30日(水) 天聲人語

放射能を封じ込める作業が放射能を広げ、時と労力を奪う。福島の

原発事故は、ひとたび暴走した巨大システムの怖さを教えている。現

場の死闘に心から声援を送りながらも、「がんばれ東京電力」の声に

力が入らない

2000-03-29

2011年3月29日(火)付 天聲人語

題は「時計」である。〈きんやさんの手にかいた時計/一日たって

も動かない/赤いいんきでかいてある/いつもおやつの時間です〉。

少女の観察は、わんぱくな級友にも優しい。62年前の10歳の作を

『詩のアルバム』(理論社)から引いた

2000-03-28

2011年3月28日(木) 天聲人語

 テレビで連日流れるACジャパンの公共広告で、金子みすゞの詩を

そらんじた方もおられよう。そのみすゞに「土」と題する作がある。

〈こッつん、こッつん、/打(ぶ)たれる土は、/よい畠(はたけ)

になって、よい麦生むよ。〉と始まる。