2000-04-01

2011年4月1日(金)天聲人語

上野動物園がきょう再開し、震災前に中国からやって来たパンダ

が公開される。途切れた日常が、遠慮がちに戻り始めた。月が替わ

り年度が改まるこの機に、せめて気持ちだけでも切り替えたい




3週間を経てもなお、この災厄は冷霧のように人心を包む。2万

に迫る安否不明と、家財を損じた十数万の避難民、先が見えない原

発事故。現実も意識もいまだ「災中」をさまよい、復興へとギアが

入らない。この国は津波になぶられ、放射能にとらわれている


電力不足、財政負担と憂いの種は尽きず、入学や転勤に伴う内輪

の宴まで自粛モードである。石原都知事は、花見酒などもってのほ

かと言う。そういう連帯の示し方もあるけれど、経済が回らないと

被災地はまた沈む。自縄自縛である


かく言うメディアも震災一色だ。世界史級の出来事を前に、報

道はともかくテレビCMまでが重苦しい。被災者を思い、節電を

心がけながらも、平生に戻せることは戻し、戻れる人は戻る時だ

ろう


日々、気の持ちようと行いを少しずつ変えて、普通に近づいて

いく。あの愛(いと)おしい、平凡な日常に。被災した人も、免

れた人も、目覚めるたびに別の一日が始まる。あすは少しだけ笑

顔が増えると信じて、前を向こう


さて、紙面一新に伴って、小欄も本日から少しだけ変わった。

字が大きくなり、日付がこうして「箱」の中に入ったことで、前

より21字少ない。一つの文にすれば以下の長さである。被災者

と心を一つにし、日本を必ず取り戻す。

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