2000-04-06

2011年 4月 6日(水)付 天聲人語

 コンビニもカップ麺もない時代、夜更けの食欲は夜鳴きそばの屋台

が満たした。チャルメラの哀調に、寝たはずの腹の虫が共鳴したもの

だ。耳の条件反射とでもいうのか、終業のチャイムは解放感を醸し、

緊急車両のサイレンは胸騒ぎを催す

 「テレビの地震速報が鳴るたび、5歳の娘が近くの人に抱きつくよ

うになった」。週刊誌のアエラに、都内の主婦(39)の話があった

。耳目を引こうと不協和音を重ねたあのチャイム。「意図された不快

音」にどれほど身構えただろう

 気象庁は4年前から、最大震度5弱以上の地震を予測すると、揺れ

が強そうな範囲に緊急速報を出している。震災前までは、17回中

12回で想定した地震が起きた

 が、あの日を境に「打率」が落ちた。48回も出したうち、想定通

りは本震を含め16回、あとは震度2以下の地域にも速報してしまい

、最大でも2という「空振り」も12回。逆に、震度5級を7回見逃

した

 同時に起きた余震を、計器が大地震と勘違いするらしい。気象庁は

恐縮するが、3割当たればオオカミ少年ではないし、打者と同様、見

逃しより空振りがいい。5歳には気の毒だが、身構えて終われば幸い

である

 各地の震度がすぐ報じられる様子に、慣れない外国人は驚嘆すると

いう。苦い経験から硬軟の技を紡いだ地震国らしく、この悲しみ、悔

しさも必ずや知恵に変え、津波から反射的に身を守るすべを磨こう。

二度と災害に泣かない故郷こそ、亡き人の願いだ。一粒の涙も無駄に

すまい。

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