2000-04-07

2011年 4月 7日(木) 天聲人語

 筒井康隆さんの短編に「ヒノマル酒場」なる傑作がある。大阪のと

ある大衆酒場。長っ尻の常連に悩む女将(おかみ)は、客を笑わせて

帰す一計を案じる。その頃、世間は通天閣前に降りたUFOで騒然と

していた

 店のテレビが伝える映像を作り物だと思った客たちは、食を調べに

訪れた宇宙人を面白半分に殺してしまう。記者が殺到する修羅場。女

将に頼まれていた男がグリコの看板の姿で現れ、「ぱんぱかぱあん。

閉店でえす」。ニュースの軽重は受け手が決める、という痛烈なメデ

ィア批判である

 あの津波もUFOのように、それまでマスコミが報じていた大小の

出来事を記憶のかなたに押し流した。震災の陰で、当事者以外には「

どうでもいいこと」になったニュースも多い

 大相撲の八百長問題はどうか。空前の不祥事とはいえ、誰かの生命

財産を損ねたわけではない。そんな大衆心理に乗じ、日本相撲協会が

「ぱんぱかぱあん」と強引に幕引きを図るなら、ファンは離れていこ

う

 八百長をしたとして処分された23人のほとんどが、不服ながら引

退する。逆らって解雇となれば退職金が消え、生計に障るからだ。「

相撲がなければただのデブ」。巨漢山本山の自虐が悲しい

 現役上位や大物師匠らの過去は問わぬまま、全容解明とするらしい

。夏場所は興行ではなく技量審査として公開される。照明も展望も暗

い国技館で、再開ありきの「どさくさ場所」。無料なら大人気だろう

が、それを免罪符としては満員御礼の八百長である。

 

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